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私の第二の祖国
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(4)職場の技能伝承と言語体系   2007年8月25日


 コミュニケーションとは、わかり合おうとするプロセスである。私たちは、相手に伝えたいことがあるときやわかってほしいことがあるとき、言葉を介して自分の意思を伝えたり、相手の考えを確かめようとする。言葉の体系は人によって違うので、相手が持っている言語体系を考慮しながら言葉を組み立てる必要がある。これを無視すると、「言った」、「いや聞いていない」という不毛の争いに陥ってしまう。年齢が大きく離れた社員とのコミュニケーションが難しいのは、彼らが持っている言語体系と自分が持っている言語体系が異なるからである。


 いま、日本の企業では技能伝承の重要性が叫ばれている。団塊の世代が持っている技能やノウハウを若手に伝えていかなければ、日本のものづくりは危うくなるのではないかと言われている。私は、頻繁に製造現場を訪れるが、その危険性は確かにある。現場は、決してサボっているわけではない。ベテラン層は、本当に高い技能を持っており、若手もそれを習得したいと一生懸命である。両者の思惑は一致しているにもかかわらず、コミュニケーションがうまくいかないために、伝えるべきことが伝わっていないという現実がある。
技能伝承を成功させるために


 この状況を解決するには、次の3つのことを実行すると有効である。


(ア)伝えるべきものを明らかにすること
 技能伝承といったとき、何を伝えるのかが明確になっていないことがしばしばある。ベテラン層が持っている技術・技能・ノウハウをすべて伝承することは、残念ながら不可能だ。何が大事なのかを見極め、伝えるべきものを明確にしなければならない。この点が明らかになれば、どう伝えるのが有効かという点も見えてくるはずである。


(イ)伝える側のコミュニケーション能力を磨くこと
 日本語が話せるから外国人に日本語を教えられるかというと、決してそうではない。日本語を外国人に教えるには、特別なトレーニングを受ける必要がある。日本語と外国語の言語体系の違いを理解し、日本語をどう説明するのが適切かという点を勉強しないと、いい日本語教師にはなれない。
 ベテランから若手への技能伝承でも同じことが言える。若年層に説明するとき、どのような言い方をするのが適切か、比喩や例としてどのような表現を使えば最も良く伝わるかといった点について、教える側であるベテラン層が一定の知識を持っている必要がある。同じ時間と労力をかけても、表現のしかたが適切でないと徒労に終わってしまう。若年層が持っている言語体系を理解し、彼らへの伝え方を勉強することがベテラン層に求められている。


(ウ)教わる側もコミュニケーション能力を高めること
 ベテラン層にだけコミュニケーション能力をつけても、技能・ノウハウは伝わらない。教わる側である若年層にも言葉の教育が必要である。「ベテラン層が30〜40年前に働いていたときには、このような技術体系のもとで、このような言葉が使われていた」という点を予備知識として持っておけば、ベテラン層との会話は相当円滑になるはずである。そんなに時間をかける必要はない。1時間半から2時間くらいで十分である。ちょっとした手間をかけることが、質の高いコミュニケーションにつながることになる。

 以心伝心という言葉があるが、企業という組織の中でそのような状況を創り出すのは不可能に近い。「話さなければ思いは伝わらない」、「伝えたいことは繰り返し話す必要がある」という事実を出発点として、職場のコミュニケーションを考えることが肝要である。


(以上)